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何度注意しても業務中にサボる社員 残業代をカットしてもいい?
2023年08月30日 [情報]
概要:業務中に明らかにサボっている社員がいます。業務で使用しているチャットもオンラインになっておらず、連絡しても何の返答もない状態が1〜2時間続くことがよくあります。注意をしても改善しないのですが、こうした場合、何らかのペナルティを科すことはできるのでしょうか。この社員は、日中仕事をサボっていることがあるにもかかわらず月に平均20時間ほど残業しているので、働いていない時間分の残業代のカットなどができないかと考えています。

A 本件ご相談内容について、「そのさぼった時間分は労働していないのだから賃金カットをしたい」という気持ちは良く理解できます。しかしながら結論から申し上げると、「さぼった時間分としての賃金カットは残業代含めできない」と思います。
 というのも、労働基準法で定める労働時間とは、「労働者が使用者の指揮命令下におかれている時間」を指しますから、たとえ業務に専念しておらずさぼっていたとしても、その時間も使用者の指揮命令下にある訳ですから労働時間とみなされ、使用者には賃金の支払義務が生じるでしょう。逆に、使用者の指揮命令下にある、つまり、業務命令ができる時間だからこそ、「職務に専念していない」「さぼっている」という概念も生まれてくることになるのではないでしょうか。したがって、直ちにさぼっている時間だからといって「ノーワーク・ノーペイ」の原則に基づき、賃金カットということはできないと考えられるのです。

 とは言うものの、「さぼっている」ということについて、何ら、その社員についてお咎めなしという対応しかできないという訳ではもちろんありません。
 「さぼっている」という行為、つまりは社員の問題行動については、他の社員の士気も下がりますから、会社としては厳正に対処すべきなのではないでしょうか。
 社員には、当然に「職務専念義務」があり、「さぼっている」ということは「職務専念義務違反」の状況であるわけですから、それについては口頭注意から始まり、指導やその他就業規則に定められている「懲戒処分」を実施すると宜しいかと思います。
 その際、「さぼった時間分の賃金カット」はできませんが、懲戒処分の中に「減給」という処分が定められているならば、適正な手順を踏んで適正な方法で、「懲戒処分としての減給」を実施することも有り得るのではないでしょうか。
 具体的には、これまで注意されても改善されなかったということですから、口頭注意だけでなく、就業規則に定められている懲戒処分について、段階的に重い処分を実施していくという方法が考えられます。

なお、懲戒処分を実施する場合には、注意すべき「7つの原則」というものがありますからご紹介します。

1.罪刑法定主義の原則
 「懲戒処分を行うにあたっては、処分の対象となる行為、処分の種類・内容を明らかにしておかねばならない。」
 懲戒処分の定めをする場合には、その種類及び程度に関する事項を就業規則に記載しなければならないとされています(労働基準法第89条)。経営者の主観で処分を実施することは許されず、その根拠の周知が必要とされます。

2.適正手続の原則
 「事実関係の充分な調査と、本人への弁明の機会付与等、適正な手続きを踏まなければならない。」
 証言や先入観だけで重要な処分を決めてしまわぬよう、客観的な証拠を収集することにより、充分に調査しなければなりません。また、本人へ弁明の機会を与える等、公平な手続きにも留意しなければなりません。就業規則に懲罰委員会の設置等行う旨定められていれば、その手続きも遵守しなければなりません。

3.合理性・相当性の原則
 「事案の背景や経緯、情状酌量の余地等を考慮して、必要のない処分や、重すぎる処分であってはならない。」
 「世間一般的にどう考えるか」という観点で、適切な処分、重すぎない処分を慎重に検討します。
 例えば、遅刻を数回しただけの社員に対し懲戒解雇するのは、明らかに懲戒処分が重すぎます。このように、会社が行う懲戒処分が社員の行った行為に比べて重すぎる場合には、懲戒処分が違法になる可能性があります。
 「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は無効とする。」(労働契約法第15条)とされているため、注意が必要です。

4.平等取り扱いの原則
 「以前に同様の事案があった場合は、当時の処分との均衡を考慮しなければならない。」
成果を挙げている社員などの問題行動には目をつむり処分せずにいると、後々、他の者が同様の問題行動を起こした場合でも処分することが難しくなります。

5.個人責任の原則
 「個人の行為に対して、連帯責任を負わせることはできない。」
 
6.二重処分禁止の原則
 「同一の事由に対して、2回以上の処分を科すことはできない。」
 
7.効力不遡及の原則
 「新たに処分の対象となる行為を定めた場合、その規定は制定後に発生した事案にのみ効力を有する。」
 問題が発生した後に、それを対象とした処分規定を設けても、効力を有しません。

 以上、このような原則を守らずに、懲戒処分を実施すると、懲戒処分自体が違法になることもあり、社員が会社に対して懲戒処分の取り消しや損害賠償を求める訴訟を起こす可能性もありますから、慎重に実施するようにしてく

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