近藤事務所のブログ | 横浜市瀬谷の社会保険管理・セクハラ相談・労務問題なら、社会保険労務士 「近藤事務所」

社会保険労務士 近藤事務所
横浜市瀬谷の社会保険管理・セクハラ相談・労務問題

Blog

2022年09月07日 [情報]

「受給開始時期の選択肢の拡大【国民年金法、厚生年金保険法等】」について 〜概要(ポイント)〜令和4年4月から

 年金制度改正法(令和2年法律第40号)が成立し、同年6月5日に公布されてから約2年が経過しました。同法改正の趣旨は、「より多くの人がより長く多様な形で働く社会へと変化する中で、長期化する高齢期の経済基盤の充実を図るため、短時間労働者に対する被用者保険の適用拡大、在職中の年金受給の在り方の見直し、受給開始時期の選択肢の拡大、確定拠出年金の加入可能要件の見直し等の措置を講ずる」(厚生労働省HP引用)というものであります。
 また、前回、当該改正事項のうち比較的相談されることの多い、「在職中の年金受給の在り方の見直し」について解説いたしましたので、今回は、「受給開始時期の選択肢の拡大」について、その概要(ポイント)を説明いたします。

1.受給開始時期の選択肢の拡大とはどのようなものでしょうか。(日本年金機構HPより)

 公的年金は、原則として、65歳から受け取ることができ、当該改正前の制度では、希望すれば60歳から70歳の間で自由に受給開始時期を選ぶことができました。65歳より早く受け取り始めた場合(繰上げ受給)には、減額(最大30%減額)した年金を、65歳より遅く受け取り始めた場合(繰下げ受給)には増額(最大42%増額)した年金を、それぞれ生涯を通じて受け取ることができますが、この繰下げ制度について、より柔軟で使いやすいものとするために改正が行われ、改正前の制度で60歳から70歳まで自分で選択可能となっている年金受給開始時期の上限を75歳までに引き上げました。そうすることで、繰下げ増額率は一月あたり、プラス0.7%(最大プラス84%)となりました。
 なお、この改正は、令和4年4月から適用され、令和4年4月1日以降に70歳に到達する方(昭和27年4月2日以降に生まれた方)が対象となります。


2.繰下げ加算額の計算方法(日本年金機構HPより)

 繰下げ受給をした場合の加算額は、老齢基礎年金の額(振替加算額を除く)および老齢厚生年金の額(加給年金額を除く)に下記の増額率を乗じることにより計算します。ただし、65歳以降に厚生年金保険に加入していた期間がある場合や、70歳以降に厚生年金保険の適用事業所に勤務していた期間がある場合に、在職老齢年金制度により支給停止される額は増額の対象となりません。

増額率(最大84%※1)=0.7%×65歳に達した月※2から繰下げ申出月の前月までの月数※3   
       
※1 昭和27年4月1日以前生まれの方(または平成29年3月31日以前に老齢基礎(厚生)年金を受け取る権利が発生している方)は、繰下げの上限年齢が70歳(権利が発生してから5年後)までとなりますので、増額率は最大で42%となります。
※2 年齢の計算は、「年齢計算に関する法律」に基づいて行われ、65歳に達した日は、65歳の誕生日の前日になります。
※3 65歳以降に年金を受け取る権利が発生した場合は、年金を受け取る権利が発生した月から繰下げ申出月の前月までの月数で計算します。
 
3.繰下げ受給の手続き(日本年金機構HPより)

 繰下げ受給を希望する場合は、66歳以降で繰下げ受給を希望する時期に手続きを行います。手続きを行った時点で繰下げ増額率が決まります。また、繰下げ待機を選択した場合であっても、繰下げ受給を選択せず、65歳からの年金をさかのぼって受け取ることを選択することができます。ただし、70歳以降に65歳からの年金をさかのぼって受け取ることを選択した場合は、手続き時点から5年以上前の年金は時効により受け取ることができなくなりますので注意が必要です※。

※ 65歳からの年金をさかのぼって受け取る時の特例(令和5年4月1日施行)
年金を受け取る権利が発生してから5年経過後に、繰下げ受給の申出を行わず老齢基礎(厚生)年金をさかのぼって受け取ることを選択した場合は、請求の5年前に繰下げ受給の申出があったものとみなして増額された年金を一括で受け取ることができます。ただし、この特例は、昭和27年4月2日以降に生まれた方(または平成29年4月1日以降に受給権が発生した方)で、令和5年4月1日以降に年金の請求を行う方が対象となります。   


banner1.jpg

PageTop