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2023年10月11日 [情報]

ビジネスにおいて注目されている「心理的安全性」

現在、ビジネスにおいて注目されている「心理的安全性」。
そもそも、「心理的安全性」とは何でしょうか?


 ここ数年の間でよく耳にするようになったワードではありますが、いわゆる(労使)トラブルと直結しないため、「心理的安全性」に対する会社の対応は、これまで後手にまわることも多かったのではないでしょうか。
 しかしながら、最近では、会社という組織ではないですが、『慶応高校の甲子園優勝の要因のひとつに「心理的安全性」の高さがあるのでは』といった声が多く上がったように、「心理的安全性」が、今、ビジネスだけでなく、あらゆる組織の中で個々が能力を発揮する上で、極めて重要で有効な要素として注目されているのではないでしょうか。
 そこで今号は、「心理的安全性」について解説いたします。

 心理的安全性とは、1999 年にハーバード・ビジネススクール教授のエイミー・C・エド モンドソンにより提唱された概念です。 心理的安全性が注目されている背景として、2016 年に Google が実施した実証実験「プロジェクト・アリストテレス」があります。Google は、成功し続けている、生産性が高いチームの特徴を探るための分析を行い、その結果、「生産性が高いチームは心理的安全性が高い」という結果をはじき出しました。

 心理的安全性とは、人が組織の中にいるとき、自分の考えや気持ちを安心して発信することができる状態のことです。「心理的安全性がある」という状態は、組織に属する人間の関係性において、自分の発言または相手の指摘などにより空気が悪くなったり、関係性を悪化させたりするといったことがないと確信できている状態であるといえます。
具体的には、組織・チームの中で「気兼ねなく自分の考えを発言できる」「不安を持たずに自分の気持ちを発信できる」という状態が構築されていることです。
 そして、ビジネスにおいては、心理的安全性が高いチームは、生産性が高いという特徴のほかに、
・離職率が低い
・自分だけでなく他者が提案したアイデアの活用が上手い
・さまざまなアイデアをビジネスに取り入れている
・マネージャーから評価される機会が他のチームの約 2 倍
・収益性が高い
といった特徴が見られることがわかりました。
Google では多くの業務が単独作業ではなくチームによって行われていたため、チームワークに特に注目して分析を実施しましたが、チーム編成と労働生産性にはほぼ関連がないという結果も出ました。
実験を行う中で成功するチームと失敗するチームの違いとして見えてきたのは、「他社への配慮・共感」「メンバー全員の発言率」だったそうです。
 つまり、心理的安全性の高さが、生産性の高さに影響しているという結果が出たのです。

 集約すると、ビジネスにおける心理的安全性のメリットは、主に以下の3つが挙げられます。
1. イノベーションの向上
社員が安心してアイデアを共有し、リスクを冒すことができると感じるとき、イノベーションの文化が育まれます。 社員一人一人が独自の視点を提供し、新しいアプローチを試し、創造的な解決策を提案する可能性が高くなります。
2. より良いチームワーク
心理的安全性は、チームメンバー間のオープンなコミュニケーション、信頼、尊敬を促進します。 これにより、効果的な問題解決、組織内の一体感の強化につながります。
3 . 社員のエンゲージメントと満足度の向上
社員が心理的に安全であると感じるとき、自分の仕事により従事し、貢献する
意欲が増し、仕事に満足します。これにより、生産性が向上し、離職率が低下
し、良好な職場環境が実現します。

では、その一方で、心理的安全性が低くなった場合のデメリットは何でしょうか。
心理的安全性が低くなると「4つの不安」が生まれると言われています。

 「心理的安全性」の提唱者である米ハーバード・ビジネススクールのエイミー・C・エドモンドソン教授によれば、職場における4つの不安とは、「無知だと思われたくない」「無能だと思われたくない」「邪魔だと思われたくない」「否定的だと思われたくない」という4つの不安です。

 例えば会議中にほかの人に変な質問をして無知だと思われたり、仕事で何度も失敗して無能だと思われたりすることへの不安。また、自分の発言がチームの邪魔になってしまうかもしれないという不安。プロジェクトに不安な点があることを伝えようと考えたときに、「不安点を指摘して ガティブな人間だと思われたらどうしよう」という不安などが挙げられます。

 その結果、生産性が低くなるだけでなく、独創的なアイデアやイノベーションは起こりづらくなり、閉塞感のある組織となってしまいます。
 
では、心理的安全性を高めるためには、どうしたら良いでしょうか。
以下のような要素が重要であると考えられています。
1. 尊重と信頼:メンバーはお互いを尊重し、信頼関係を築くことが重要です。他のメンバーの意見や感情を尊重し、批判的な態度や攻撃的な態度を避けることが求められます。
2. オープンなコミュニケーション:メンバーは自分の意見や感情を自由に表現できる環境を作る必要があります。定期的なチームミーティングやフィードバックセッションを設けること、コミュニケーションのルールやフィードバックの仕方について明確にすることも重要です。
3. ミスや失敗の受容:心理的安全性の高い環境では、ミスや失敗を恐れずに取り組むことができます。そのためには、メンバーがミスをした場合に、非難や罰を与えるのではなく、共有と学びの機会として捉えることが大切です。また、メンバーは自分のミスや失敗をオープンに共有し、他のメンバーからサポートを受けることができるようにします。
4. リーダーシップの役割:リーダーは心理的安全性を高めるために重要な役割を果たします。リーダーはメンバーをサポートし、フィードバックを提供し、オープンなコミュニケーションを促進することが求められます。また、リーダー自身がミスや失敗を認めることで、メンバーに対して心理的安全性を示すこともできるのではないでしょうか。

 まだまだ「心理的安全性の高い組織はぬるま湯的な緩い組織である」と誤解している意見も聴こえてきますが、会社や組織は、ただ単に楽しくて緩い組織を目指しているのではなく、一人一人が仕事などで高いパフォーマンスを達成するために「心理的安全性」の高い組織を目指しているということを忘れないようにしたいものです。

 是非、会社という組織において、心理的安全性が高い環境を構築できるような取組みを検討されてみてはいかがでしょうか。

※ 「心理的安全性」については、法律に基づく正式な定義などはなく、概念の一つと考えられます。また、概念についても専門家の間で100%一致している訳ではないことをご承知おきください(令和5年9月25日現在)。


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